カウンセリングとは、専門的な知識や技術を持つ「カウンセラー」と、困りごとを抱えている相談者「クライエント」が、対話や様々な活動を通して、クライエントの抱える困りごとの解決を目指すものです。
広い意味では、法律、仕事のキャリア、教育、美容、環境など、個人や社会の関わる様々な困りごとの相談援助行為を含めます。心理カウンセリングでは、心理学の知識と技術を用いて相談援助が行われます。
それぞれのカウンセリングについて以下に解説します。
心理カウンセリングにおいて、カウンセラーは、クライエントの話すことを「受容的に、共感的に」受け止めます。そのような安心できる環境の中で話をすることで、気づきを得たり、クライエントの持つ回復する力を発揮できるようにしたり、自身への理解を深めたり、行動を変えたりすることにより、心身ともに回復することを目指します。
<出典>
エビデンスに基づくカウンセリング効果の研究 ミック・クーパー著
「ブレインスポッティング」は2003年にデイビット・グランド博士によって開発された心理療法です。視線(注意)と体の感覚を共に用います。視線の反射を利用して、脳の深い部分に働きかけ、トラウマの軽減・解消や様々なパフォーマンスの向上を図ります。
トラウマの解消、解離性障害、心的外傷後ストレス障害、痛みへの対応、スポーツのパフォーマンスの改善に効果が期待できます。
<出典>
ブレインスポッティング入門 デイビッド・グランド著
最高のパフォーマンスを実現する! 【ブレインスポッティング・スポーツワーク 】~トラウマ克服の心理療法~ アラン・ゴールドバーグ 著, デビッド・グランド 著
鈴木孝信(2020). ブレインスポッティング:新しい複雑性PTSDへの心理療法―視野上の注視により強められたトラウマへの焦点化と共通要因の活用― 精神神経学雑誌 122, (10), 781-788.
ボディ・コネクト・セラピーとは、藤本昌樹先生により開発された、新しい心理療法です。これまでの効果のあった心理療法のエッセンスに新しい概念を加えて考え出した、身体から働きかける心理療法です。
トラウマは、脳だけでなく身体にも残されています。身体感覚に注意を向けることで、脳と身体をつなぎ、タッピング、眼球運動、アファーメーション(セルフイメージを肯定的にする)などを用いて、トラウマを身体から解放していきます。
特徴としては、
①一つ一つのトラウマ記憶の処理にかかる時間が圧倒的に短い。
②強い不安感や記憶の再体験などといった、活性化が出にくい。
③解離(記憶や物事を感じなくなること)を起こしにくいように工夫されている。
といったことがあげられます。
Unification of Subconscious Personalities by Tapping Therapy (タッピングによる潜在意識下人格の統合法)
USPTとは精神科医の小栗康平先生によって2007年に発表された新しい心理療法です。これまで発見されていた、左右の交互刺激、背部刺激による人格の融合、統合の技法などを用い、解離性人格障害の治療法として開発されました。
USTPの特徴
・安全に配慮された心理療法である
・比較的回復までの期間が短い
・解離症の心理療法である
・人格の統一感が得られる
・解離まではしていないが、「イヤな記憶」にも効果が期待できる
<出典> 新しい日本の心理療法 池見陽 浅井伸彦 編 USPT入門 解離性障害の新しい治療法 USPT研究会 監修 新谷宏伸 十寺智子 小栗康平 編著
更新日:2024年6月20日
認知行動療法では、「私たちの感情や行動は、ものごとのとらえ方を変えることで、落ち着かせることができる」と考えます。たとえば、仕事でミスをして注意をされたときに「自分はだめだ」と考えたらとても落ち込んでしまいます。認知行動療法では、「ミスはしたけれども次はそこを注意しよう。自分はだめだというのは言い過ぎているな」とより現実的に考えられるようにします。そうすることで感情や行動が変わるからです。
また、具体的に目標を設定して、練習をしていくことも大きな特徴です。自分を落ち着かせる考え方は、練習をすることで身につけられます。それは小学生から大人まで、精神的につらい時に落ち着くためにも、元気なときにより合理的な考え方を身につけようというときにも、いろいろな場面で役に立ちます。
<出典>
〈増補改訂 第2版〉いやな気分よ、さようなら―自分で学ぶ「抑うつ」克服法 デビッド・D.バーンズ著
認知療法実践ガイド基礎から応用まで―ジュディス・ベックの認知療法テキスト ジュディス・S. ベック著
更新日:2020年9月8日
マインドフルネスとは、「今ここで起こっていることに注意を向けること」です。
マインドフルネスの状態になると、自分自身を深く理解し、感情とより良く付き合っていくことができるようになります。そしてそのことは、自分がここにいることを受け入れること=自尊心・自尊感情に繋がります。マインドフルネスの実践により、心と体のつながりに気づき、自分の感情を受け入れ、自分を大切にした生き方ができるようになります。
マインドフルネスを意識的に取り入れてある心理療法には、「マインドフルネスストレス低減法」「マインドフルネス認知行動療法」「アクセプタンス&コミットメントセラピー」などがあります。
どの技法も自分の「考え」「感情」「状態」に、静かに深い注意を向け、今ここで何が起こっているのかを感じ、自分に何が起こっているかを知るエクササイズを大切にします。
マインドフルネスは、様々な心の状態に効果があります。ストレスの軽減、落ち込み、うつ状態、不安症状、体の痛み、過敏性腸症候群など、心と体が関わる症状に効果が期待されます。
家族療法とは、問題を示している本人だけではなく、その本人を含めた家族(コミュニティ)も対象として捉え、働きかける心理療法の方法です。
不登校や引きこもり、うつや不安といった様々な問題とされる状態は、たまたま本人がその症状を示しているのであって、家族間のコミュニケーションのあり方を変えることによって問題の解決を図ることができる、という考え方のもとに家族療法は行われます。
●問題を本人のメンタルの問題だけではなく、家族間のコミュニケーションといった面からも捉え、アプローチすることができる。
●問題を抱えた本人がカウンセリングや支援につながることができない、ということがあったとしても、まずは悩みを感じている家族からカウンセリングを始めることができる。
●カウンセリングごとに家族間の課題を決め、普段の生活でもその課題に取り組んでいくことによって、問題を抱えている本人だけでなく、家族間のコミュニケーションがよくなることや、風通しが良くなると言った点も期待される。
1回〜大体は複数回継続で行われます。症状によっては年単位でカウンセリングが行われることもあります。
不登校・引きこもり・家族の問題・うつ・落ち込み・依存の問題・対人関係の問題・摂食障害・自傷行為など、様々な問題を扱うことができます。
心理教育とは、こころのの健康やメンタルヘルスについての知識を学ぶことを指します。心理教育には、自分や他人の感情や行動を理解する方法、ストレスや困難に対処するためのスキル、健康的な人間関係を築き、維持する方法などが含まれます。
心理教育の目的は、わたしたちが自分の精神的な健康を維持し、改善するための知識と技術を身につけることです。
心理教育の主な内容として
1.感情の理解とコントロール:
感情を認識し、適切に表現する方法を学びます。認知療法、アファーメーション、アサーティブトレーニングなど。
2.ストレス管理:
ストレスの原因を理解し、対処するためのテクニックを習得します。
セルフケアの方法:十分な休息、運動、バランスの取れた食事など。
リラクゼーションテクニック::深呼吸、瞑想、ヨガなど。
3.コミュニケーションスキル:
効果的なコミュニケーションの方法を学び、人間関係を改善します。
サポートネットワークの構築:友人や家族、専門家とつながりを持つことなど。
具体的な場面でのコミュニケーショントレーニング:ソーシャル・スキル・トレーニングなど。
4.困難な状況に対処するための具体的な手法を学びます。
問題解決スキル:リソース探し、リフレーミングなど。
これらの知識を用い、心理教育は、心の健康を保つための基本的な知識と技術を身につけることを目指しています。